メンバーの言いたい放題 26



 Maryはるみの 愛犬日記6
 お友達 天国に行ったさくらちゃん(ラブラドールレトリバー)と
 お父さんに追悼の意を込めて

葉月に楽しい自転車のお散歩を教えてくれた東京のおじさんのところには、実は、さくらちゃんというラブラドールレトリバー(12才)の女の子がいました。しかし、残念ながら11月7日の朝、さくらちゃんは天国に行ってしまいました。12才とはいえ、3ヶ月前までは、とっても元気でキャッチボールが大得意の鍛えられたバネを持った子でした。
 お父さんのことが大好きで大好きで、片時もはなれるなんて考えられないほどの熱愛ぶりでした。おうちの中でも、お父さんの移動するあとをずーっとついて回ります。居間からキッチン、トイレからお風呂とどこに行くにもお父さんのことが気になります。時々、お父さんがマッサージさんを呼んで体を揉み解してもらうことがあるのですが、マッサージさんが上になってお父さんの体をたたいたりもんだりすると、さくらちゃんは、「お父さんをいじめないで!」と言って助けようとして吠えます。お父さんが、「うぅっ!」と言って倒れこむと、鼻先を体の下から突っ込んできて必死で起こそうとします。腕立て伏せ運動をしていても、お父さんが苦しんでいると思い込んで、助けに来ます。
 お散歩に行く公園では、なぜかお父さんは、どんな犬にもモテモテで公園ではすぐに犬たちのリーダーになってしまいます。ほんとは気が小さくて臆病なさくらちゃんですが、お父さんという後ろ盾があるから、公園ではさくらちゃんもお山の大将になることができました。お父さんがいれば、百人力、怖いものなしです。他の犬たちも、お父さんのさくらちゃんだからといちもく置いてくれています。
 そんな大好きで頼りになるお父さんが、この夏、腎臓結石の手術のために入院してしまいました。いつも、お父さんの帰りを楽しみにしていたさくらちゃんには、突然お父さんが帰らなくなったことが理解できません。毎晩、玄関のドアの前でじっと待っていました。お兄さんが遅く帰ってきてドアーを開くと、待ちくたびれてドアーに寄りかかったまま寝ているさくらちゃんが開いたドアーから転がり出てきたそうです。さくらちゃんにとって、悲しい悲しい毎日が過ぎていきました。さくらちゃんには、お父さんのいないことがよほど堪えたのでしょう。食欲もなくなり、嘔吐したり下痢をすることが多くなってきました。体重は減る一方で、体力がなくなりましたが、それでもお父さんの帰りを待つために、毎晩玄関先で寝て待っていました。お父さんも病院の中でさくらちゃんの様子を聞いて心配しているのですが、病院ではさくらちゃんは敷地内にも入ることもできず顔を見ることも叶いませんでした。
 やっと1ケ月近い入院生活を終え帰宅したお父さんも、かなり体力が弱っていましたが、さくらちゃんのために頑張ってお散歩してあげました。大喜びのさくらちゃんでしたが、お父さんが帰ってきたにもかかわらず、どうも元気が取り戻せません。ついには、歩けなくなって足が痛いのか、他に何か大事な原因があるのか調べるために、今度は、さくらちゃんが入院することになりました。お父さんの精一杯の愛情をもって獣医さんにさくらちゃんのことをお願いしました。検査の結果は、遅々としてすすまず、脳炎を起こしていることだけは分かったのですが、その原因がつかめないままに時が過ぎていこうとしています。お父さんが面会に来るとさくらちゃんは、精一杯の力を込めて、一生懸命に尻尾を振って喜びを表現しました。お父さんと帰りたい一心で歩けないのに前足でにじり寄り連れて帰ってと訴えました。お父さんのほうも泣きながら、でも何とか助けてもらいたい一心でさくらちゃんを獣医さんに託すことにしました。本当なら、抱きしめて連れて帰りたいのを必死にこらえて帰ってきました。そうこうするうちに、一週間もするとさくらちゃんは、お父さんが面会に来ても、いったい誰なのか分からなくなってしまいました。きっと、薬のせいなのでしょう。痛みや嘔吐や下痢を止めるための薬が一時的にさくらちゃんの脳を麻痺させているのでしょう。大好きなお父さんが分からないなんて悲しくてつらいことだけど、さくらちゃんの痛みがとれるのならと、お父さんは我慢しました。2〜3日すると、さくらちゃんもお父さんのことが認識できるようになり、しかし、はっきりとした原因もつかめないままに、さくらちゃんの積極的な治療に入ろうとしていた矢先でした。突然、朝早く、お父さんに連絡がありました。さくらちゃんの様子が急変したと・・・・・・その朝、さくらちゃんは、静かに天国に召されました。
 悲しいけど、やっとさくらちゃんがうちに戻って来ました。お父さんは、「さくら、お帰り」と言って、おうちで一番いい場所に寝かせてあげました。ラブラドールの中でも、やさしい目がとろんとしてとっても美人さんのさくらちゃんでした。お散歩中も、いつも「可愛いお顔してるね」と言われて、お父さんの自慢のさくらちゃんでした。お父さんは、さくらちゃんをひざに抱きかかえて、入院で引き離されていた間の分以上に、いつまでもいつまでも優しく体をなでてあげました。
 お父さんとしっかりお別れしたあと、桐の箱の中に寝かされたさくらちゃんは、いっぱいのお花で埋め尽くされ、静かに閉じた目がまるで寝ているようにやすらかでした。

 翌日、家族みんなに見守られる中、さくらちゃんの葬儀が終わりました。お父さんは、若い頃からずーっと犬と暮らす生活をしてきましたが、さくらちゃんは、特別の思い入れのある犬でした。というよりも、さくらちゃんのほうがお父さんに尋常ではない愛情を注いでくれていたのかもしれません。家族みんなで、ほうかむりして泥棒に変装したさくらちゃん、サングラスをかけたさくらちゃん、元気に公園を走り回るさくらちゃんの写真や映像を見て、楽しい思い出を一杯残してくれたさくらちゃんに感謝しながら、お別れしました。今は、きっと天国で楽しく遊んでいることでしょう。


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