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葉月とジャズが初めて雪を見た翌日(2000/2/10)のこと。
今では誰も住んでいない野鳥の里の別荘地に行く坂道を登りきると、道もない山の傾斜面に入ることができます。葉月は、ここに一昨日お父さんと一緒に遊びにきた時のことが楽しくて忘れられません。 |
今日も、散歩にお出かけすると、お家から少し行ったあたりから、一緒に歩いているお母さんの腿のあたりを顔で制し、ジャズと一緒に歩いているお父さんの前まで進んでいって、立ちはだかるようにしながら、甘えた眼差しでなにやらお父さんに訴えました。お母さんには、分かりませんでしたが、お父さんにはすぐに葉月の言いたいことが分かりました。葉月がさかんにお父さんの顔をみあげながら、「ねえねえ、お父さん、またあそこに行こうよ。あそこに連れて行ってよ。」という声がお父さんには届いたのです。「葉月、なあに? 行きたいところがあるの?」というと、お父さんは、葉月の行きたいようにまかせて歩いてみました。すると、やはり葉月は、いつもの散歩のコースから左の道に折れると、野鳥の里に向かい始めました。お父さんもお母さんもジャズも、みんなが葉月のあとについて行きました。 |
葉月もジャズも昨日生まれて初めて見た雪にとてもうれしくなって、わざわざ溶けずに残っている冷たい雪の上を歩きながら行きました。野鳥の里を登りきると、一昨日遊びにきた山の傾斜面があります。葉月もジャズも坂道の途中から、ノーリードにしてもらいました。 |
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2匹はうれしくてうれしくて、どんどん先に登っていきます。ときどきは、お父さんとお母さんの方をふりむきながら、ちゃんと来ているかしらと様子をみながら、坂道を登っていきます。いよいよ道を登りきったあたりになると、葉月が後ろをふりかえり、お父さんとお母さんの指示をあおぎます。「お父さん、お母さん、どちらの道へ進むの? こっちでいいの?」と顔で問いかけています。ジャズも一緒になってふりかえります。お父さんが、「この前行った山の傾斜面に行くよ。こっちだよ。」と指で坂道の向かっている道と反対の方向をさすと、葉月とジャズは、すぐにその指示を理解して、小さなほこらのある行き止まりの広場からわきにそれて、山の傾斜面に入っていきました。 |
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2匹は、傾斜面をジグザグに登ったり降りたりしながら、いろんな臭いをかぎ分けています。きっと、狸や熊の臭いが残っているのでしょう。怖がりのジャズは、ときどき横道にそれながらもいつも葉月のあとに続いて走ります。ジャズは、葉月のことをお姉さんのようにすっかり頼りにしているからです。 |
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(挿入写真は、雪の翌日ではありません。残念ながら、カメラを忘れたのです。)
斜面には、まだ雪が残っていて、はしゃぎすぎてのどの渇いた2匹は、シャーベット状になった冷たい雪を食べて、のどを潤しました。また、いたずらで何にでも挑戦する葉月は、寝転がって体を雪にこすりつけていると、後ろ足で蹴った拍子に体が斜面を滑っていくのが分かりました。雪の上をずるずると滑り落ちるのが面白くてたまりませんでした。
溶けかけた雪の上で、なんどもなんども寝転がって滑っていたので、葉月はすっかり泥んこになってしまいました。「あ〜ぁ、また葉月はこんなに汚しちゃったよ。」お母さんは、いつものことですが葉月のいたずらを微笑ましく思いながらも、あとの大変なことが頭の中をちらちらしました。でも、お母さんは、いいことを思いつきました。雪をかき集めて、なんどもなんども葉月の体にこすりつけると、葉月はすっかり雪に洗われて、きれいになったのです。
山の斜面での遊びも終わり、みんなで坂道を降りていくと途中に日当たりが悪く雪のたくさん残っているところを見つけました。もう、たまりません。葉月とジャズは、まるで子猫のようにピョンピョンはねてやわらかい雪の上を踏みつけました。野鳥の里を降りきって家路につくと、途中で杉の林に包まれた一軒のおうちと畑があり、そこにも今度はスキーができそうなほど広く雪が残っていました。葉月は、それを見つけると、お父さんを見あげて「お父さん、あそこにいい所があるよ。あそこで遊んでいいでしょ。」とお願いしましたが、その望みは受け入れてもらえませんでした。「あそこは畑だから遊ぶところじゃないんだよ。」とお父さんに言われて、ちょっとガッカリしたけれど、今日はたくさん遊んだので、葉月は素直に家路につきました。その後、葉月は散歩のコースの中に野鳥の里が組み込まれるよういつもお父さんとお母さんにお願いするようになりました。
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